尿道下裂
尿道下裂ってなんですか?
陰茎の中央より先に出口があるものを遠位型といい、根元に近いものを近位型といいます。近位型では、陰茎勃起時に陰茎下方彎曲や小さい陰茎なども多いです。
尿道下裂の発生頻度は?
尿道下裂は遺伝しますか?
はっきりはわかっていません。
報告としては、尿道下裂の子供の8%の父親が尿道下裂との報告、また兄弟で発生する場合があるとの報告があります。
尿道下裂の合併症はありますか?
尿道下裂の合併症には、精巣が陰嚢内に収まらない停留精巣、腸が下がってくるソケイヘルニア、陰嚢の形態異常である二分陰嚢や陰茎前陰嚢などがありますが、手術によって治療可能です。
尿道下裂の手術時期はいつですか?
初回手術時期は、一般に3ヶ月から15ヶ月の間が多いようです。早すぎると手術のリスクが高くなります。3歳前後では手術に抵抗する子も見られます。オムツが取れた後だと、手術直後に痛みを心配して排尿を我慢しすぎてしまうのでオムツが取れる前がベストです。しかし、成長に伴い、排尿だけでなく勃起機能、陰茎の形状に問題が生じる場合があります。われわれのところでは、成人の方も修正手術を行っています。
手術時間、手術回数について教えてください?
手術時間は、2-3時間で、通常は一回の手術で終わる予定ですが、成長につれて陰茎の形に問題があれば修正手術を行います。彎曲の高度のものは、陰茎延長も同時に行います。また、修正手術で組織の状態が悪い場合は、頬粘膜(ほっぺの内側の口腔粘膜)を陰茎に移植した後6ヶ月以降に尿道の形成を行います。
貴施設ではどのような手術方針ですか?
われわれの施設では、陰茎の長さに配慮した手術、顕微鏡下手術、勃起状態での陰茎の形や無理のない縫合の確認の3点を手術方針としています。
陰茎の長さに配慮した手術患者さん本人が陰茎の形を医師に相談するのは成人になってからです。成人になってからの修正手術には、陰茎海綿体に真皮移植または静脈移植する陰茎延長術と尿道を作りなおす尿道延長術を行う患者さんもいますが難しい手術です。
われわれはこのような経験を生かし初期治療から陰茎の長さや形に配慮した手術法を行っています。プリケーション法という陰茎背側を縫い縮めて陰茎の彎曲をまっすぐにする手術がありますが陰茎を短くします。われわれは延長できるものを十分延長した後にわずかな彎曲の修正に使用しています。
尿道の縫合は非常に細かい作業ですが、より正確に縫合する必要があります。そこでわれわれは尿道の縫合に顕微鏡を使用しています。
勃起状態での陰茎の形や無理のない縫合の確認陰茎の彎曲には、3箇所の原因があります。陰茎基部の皮下組織、尿道側の皮膚(尿道板といいます)、陰茎海綿体です。
陰茎基部の皮下組織の剥離後、尿道側の皮膚の延長後、陰茎海綿体延長後、その時々に生理的食塩水を用いて人工勃起させ陰茎がまっすぐであるかの確認が必要です。また、新しく作る尿道の長さや太さは、勃起した状態で無理のないようにしなければなりません。
入院期間はどれくらいですか?
尿道カテーテル(尿をだすチューブ)をつけたままでは、3泊4日、尿道カテーテルを抜いて帰る場合は9泊10日くらいです。ろう孔(小さい穴)閉鎖などで尿道カテーテルを使用しない場合は2泊3日くらいです。移植手術の場合は入院期間が少し長くなります。
退院後の注意、通院は?
傷が安定するのに3週間かかります。
強くこすったりぶつけたりしないでください。
通院は約1週間から10日後に1回、次が2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後と間隔をあけていきます。
通院中に問題があれば修正手術も検討します。 他の病院で手術された患者さんも修正手術に応じています。 成人の方でも受け付けています。
尿道下裂手術の合併症は?
ろう孔、尿道狭窄(狭い)、尿道憩室(尿道に尿がたまる)、陰茎彎曲、陰茎が短い、陰茎が細い、陰嚢の形が悪いなどがあります。ろう孔閉鎖手術は、中学生以上であれば局所麻酔で日帰り手術も可能な場合があります。
最終的な目標は?
われわれは成人の性機能も専門にしています。正常な排尿はもちろんのこと、正常な性機能もわれわれの目標です。また、性器に関するコンプレックスをできるだけ解消していきたいと考えています。