尿道狭窄症

尿道狭窄症とは?

尿道の役目は、体外に尿を排出ための尿の通り道です。尿道は、男性の射精にも重要です。尿道の外傷、感染などによる尿道の瘢痕化が尿の流れを妨げたり遅らせたりする場合を尿道狭窄と呼びます。尿道狭窄で痛みを感じる人もいます。

尿道はどのようになっていますか?

膀胱に溜まった尿は尿道を通って体外に排出されます(排尿と呼びます)。男性の尿道は女性の尿道よりも長く、尿は膀胱から長い距離を移動します。
男性の尿道は、尿が流れる順番に、膀胱頸部(膀胱の開口部)、前立腺部尿道(前立腺に囲まれた尿道)、膜様部尿道(外尿道括約筋付着部)、近位球部尿道、遠位球部尿道、陰茎尿道(振子部尿道;露出した陰茎部分の尿道)、外尿道口(陰茎先端の出口)となっています。

尿道狭窄の原因は?

男性は、尿道が長いため病気や外傷の可能性が高くなります。このため尿道狭窄は男性に多く、女性や乳児ではまれです。
尿道狭窄は、膀胱から陰茎先端までどこでも発生する可能性があり、尿の流出障害や遅延を起こします。一般的な尿道狭窄の原因は以下のとおりです。

    1.尿道または骨盤の外傷 2.尿路感染症 3.尿道に挿入する内視鏡処置(腎尿管結石摘除術ほか) 4.前立腺肥大症手術 5.尿道または前立腺のがん 6.尿道カテーテル留置 7.放射線治療 8.硬化性苔癬(LSA:外尿道口狭窄から始まり、長い狭窄に進む)9.原因不明

尿道狭窄の症状は?

尿道を水を出すホースに例えると、ホースにねじれや狭窄があると流量が低下します。尿道狭窄が尿の流れを低下させると症状が現れます。排尿障害、尿路感染症、前立腺の腫れが発生する可能性があり、長期間の重度の閉塞は、腎機能障害になる可能性もあります。
いくつかの兆候は以下のとおりです。
血尿、血精液症、尿流遅延や減少、尿線分離、排尿時痛、腹痛、尿道漏出、尿路感染、陰茎浮腫、膀胱機能障害など。

尿道狭窄による排尿障害以外の合併症は?

尿道炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎、尿道周囲膿瘍、尿道憩室、尿道皮膚瘻、尿道がん、膀胱結石などがあります。

尿道狭窄の診断は?

尿道狭窄を診断するためのいくつかの検査があります。 1.診察 2.尿流量測定 3.尿道鏡検査 4.逆行性尿道造影

尿流量測定とは、尿をためてから、排尿してもらい尿の勢い・排尿量・排尿時間などを機器で測定することです。
尿道鏡検査は、尿道に潤滑剤を入れてから細くて曲げることができる内視鏡で尿道内を観察する方法で尿道が狭窄している部位を観察します。
逆行性尿道造影は、外尿道口から造影剤と麻酔ゼリーを混ぜたものを注入してレントゲン撮影する方法です。尿道狭窄の位置、数、長さ、重症度を確認します。尿道完全断裂の場合は順行性尿道造影(膀胱から尿道狭窄部まで)と組み合わせると手術を計画するための尿道欠損部の長さを推測できます。

尿道狭窄にどんな治療法がありますか?

狭窄・閉塞の大きさや瘢痕組織の量に応じていくつかの選択肢があります。尿道狭窄治療の目標は、一時的な改善だけでなく、治癒することです。尿道形成術は、長期的な成功率が約80〜95%であり、ゴールドスタンダードの治療法です。 1.尿道拡張術 ブジー(さまざまな太さの金属棒)やバルーンダイレーター(風船のついたもの)で狭窄尿道を徐々に拡張する方法です。麻酔ゼリーを尿道に注入して外来で行うことができます。多くの場合この処置は繰り返す必要があります。しかし、頻回に繰り返すことで尿道の瘢痕化が進行してしまう可能性があります。拡張は、周囲の瘢痕組織が少ない狭窄のみを治癒する可能性がありますが、全体として、長期的な成功は低く、再発率は高いです。 2.内尿道切開術 内視鏡下に狭窄部をレーザーやナイフで狭窄部を切開する方法で、入院して全身麻酔などで行います。切開した狭窄部は粘膜で覆われていないので瘢痕化によって狭くならないように尿道カテーテルを長期間留置します。内尿道切開術は、周囲の尿道瘢痕組織が少なく短い狭窄(1cm未満)に対してのみ治癒する可能性があります。長さが2cm未満の球根尿道狭窄の場合、1年で最初の尿道切開後の成功率は60%であり、5年までに成功率は26〜14%に低下します。手術後に尿道拡張を頻回に繰り返す必要がある場合、尿道の瘢痕化が進行してしまう可能性があります。 3.尿道形成術 尿道形成術は、開放手術で尿道端々吻合術、口腔粘膜移植術、有茎島状皮弁作成術などがあります。通常は入院して全身麻酔などで行います。手術の時期は、瘢痕が安定する3か月以降が望ましい。途中で尿閉になった場合は、尿道拡張や尿道カテーテル留置は行わず膀胱瘻造設を行います。
  • 尿道端々吻合術は、近位球部尿道の尿道断裂や短い尿道狭窄に行います。会陰部(陰嚢と肛門の間)の切開で、狭窄原因の瘢痕をきれいに切除してから吻合部に縦の切り込みを入れて尿道を広げた状態で結節縫合します。尿道カテーテルを約2週間留置、3週目に尿道鏡で吻合部の状態を確認し膀胱瘻を抜去します。約95%の長期の良好な結果が得られます。陰茎尿道または球部尿道の長い狭窄に対しては、狭窄切除を行うことはできません。 無理に縫合すると断裂や陰茎短縮と湾曲になる可能性があります。
  • 口腔粘膜移植術は、移植片(口腔粘膜)はそれ自身の血液供給を持っていないので、生き残るために移植された部位の血液供給に依存します。移植片は、尿道を完全に置き換えるのではなく、パッチを当てて尿道のサイズを大きくすることにより、狭い尿道を再建するために使用されます。尿道海綿体が存在し良好な血流がある場合は、狭窄部下側を縦切開し口腔内頬粘膜を移植し血流の多い尿道海綿体で覆います。陰茎尿道で断裂に近い強い狭窄部には、尿道の上側と下側に(全周に)口腔粘膜を移植します。尿道カテーテルは約2週間留置します。口腔粘膜は皮膚と違い収縮が少なく、約80〜85%の成功率が得られます。
  • 口腔粘膜移植術(二期的手術)は、尿道振子部で強い狭窄部が長く存在する場合は、狭窄部尿道を開放し、尿道上側に口腔粘膜を移植(1回目の手術)し、移植片は3か月から1年で安定します。その間、外尿道口は陰茎根元にあるので座位で排尿する必要があります。二期的に尿道を作る手術(2回目の手術)は、移植粘膜をチューブ状に形成します。尿道カテーテルは約2週間留置します。口腔粘膜は皮膚と違い収縮が少なく、約80〜85%の成功率が得られます。
  • 有茎島状皮弁作成術は、尿道下裂術後など血流豊富な尿道海綿体が存在しない、または頻回のブジーや手術で瘢痕化が強くなり血流の良い組織がない場合、移植部位の血液供給に依存しない包皮有茎島状皮弁(血流のある組織)で狭窄部尿道内面にパッチして内腔を広げる手術を行います。包皮皮弁は、狭い尿道部分へのパッチとして使用され陰茎尿道の長い狭窄を再建するのにも適しています。短期間の成功率は約80-85%です。包皮皮弁を チューブ状に巻く方法の成功率は低いです。陰嚢からの皮弁は、合併症の発生率が高く、成功率が低いため、尿道形成術では避ける必要があります。尿道カテーテルは、約1-2週間留置します。これらの手技は複雑で形成外科の経験をもつ外科医が行う必要があります。

尿道狭窄治療後はどうなりますか?

尿道狭窄は手術後に再発する可能性があるため医師の定期的な診察が必要です。必要に応じて尿流量測定、尿道鏡検査、逆行性尿道造影を行うことがあります。尿道形成手術後に吻合部や移植片が段差を作り尿道狭窄になっている場合は、1-2度の尿道拡張術が有効な場合があります。重篤な狭窄が再発した場合は、尿道形成術を繰り返す必要があります。