国内で確認されている疾患の中には、男性特有のものも多く存在します。男性特有の疾患は男性器に関するものが主で、放っておくと重症化しやすい疾患が多いです。
しかし中には、命に関わる疾患でないものもあり、長期間放置されてしまいがちな疾患もあります。
今回は、放置されやすい疾患の1つでもある「陰茎湾曲症」について解説します。
陰茎湾曲症はその名の通り、陰茎が曲がってしまう病気です。陰茎湾曲症は、陰茎屈曲症とも呼ばれ、他人と比べることのない部分だからこそ発見が遅くなりがちですが、治療を行わなければ性交障害による男性不妊症につながる危険性があります。
当記事では、陰茎湾曲症の原因や診察方法の他、当院の手術の流れまで詳しくお伝えします。もし性交や男性器にご不安がある方は、ご自身の状態と比べながらご一読ください。
陰茎湾曲症とは?
陰茎湾曲症は、勃起した際に陰茎が屈曲する疾患です。
そもそも陰茎は3つの海綿体からできていて、その内の1つは尿道になっています。さらに尿道の上には勃起に関する陰茎海綿体が2つあり、これらに血が巡ることで膨張して勃起します。この時、陰茎が曲がってしまうのが陰茎湾曲症です。軽度の屈曲ではさほど問題がありませんが、性交に支障が出てしまう場合は手術を行います。
生まれつき陰茎湾曲症の方(先天性陰茎湾曲症)もいれば、成長の過程で何らかの問題が発生して発症する方(後天性陰茎湾曲症)もいます。どちらのケースでも性交が上手くいかないことが続いてくると男性不妊症や男女の関係悪化の原因になりますので、早期の診断と治療が重要です。
陰茎湾曲症の原因
先天性陰茎湾曲症と後天性陰茎湾曲症で、それぞれ原因が異なります。
先天性陰茎湾曲症
生まれつき陰茎海綿体の発育バランスが悪いことが原因です。
陰茎は、尿道海綿体と2つの陰茎海綿体で構成されていますが、稀にこれらの発育バランスが悪いことがあります。陰茎海綿体の成長がアンバランスなため、高確率で陰茎が曲がってしまうのです。
先天性陰茎湾曲症の場合、尿道下裂(尿道の出口が陰茎の先端にない状態)や尿道板(尿道側の皮膚)の引きつれも併発することがあります。
後天性陰茎湾曲症
後天性陰茎湾曲症とは、成長とともに何らかの問題が発生して陰茎が曲がってしまった状態です。後天性湾曲症には「ペロニー病」による湾曲があり、原因は不明ですが良性の疾患です。
ペロニー病は形成性陰茎硬化症とも呼ばれており、1743年に初めて報告されました。海綿体を包み込んでいる膜(白膜)にしこりが生じる疾患で、このしこりが勃起時の妨げとなり、陰茎が湾曲してしまいます。発症の原因は分かっていませんが、中高年になって発症するケースが多いです。
最初の1年程度は痛みを伴いますが、その後は痛みが引いていきます。しかし、湾曲やしこりは残存することが多く、性交障害になれば治療が必要です。
陰茎湾曲症の診察方法
まずは問診です。
問診では、発症の時期・尿道下裂の有無・勃起硬度の程度・陰茎知覚異常の有無などについて伺います。勃起時の写真をお持ちいただくとわかりやすいです。写真を撮る際は、陰毛を短く切って完全に勃起した状態で撮ります。上からの写真と横からの写真の2種類が必要ですので、しっかり状態が確認できるものをお持ちください。写真は、スマホやデジカメ等の撮影で構いません。
もし写真のご持参がない場合は、症状について絵や指で表現していただき、後日写真を見せていただくこととなります。
問診の次は触診です。
陰茎湾曲症の原因を調べるため、しこり(硬結)の有無を確認します。もししこりがあれば、後天性陰茎湾曲症の原因の1つでもある「ペロニー病」の可能性が高いでしょう。
問診や触診で陰茎湾曲症の状態を確認し、手術の有無を決めます。
手術となった場合でも、その場でいきなり始めることはありません。しっかり説明をしてご納得いただいてからとなりますので、ご安心ください。
手術の適応と時期
陰茎湾曲症だからと言って、必ずしも手術を行うわけではありません。手術が必要となるのは、性交障害を伴う場合のみです。性交時に、挿入困難・抜けやすい・女性側が痛みを感じる・体位が制限される等のお悩みがある場合は、男性不妊や男女関係の悪化となるので手術を行うべきでしょう。
これまで長く専門医を続けてきた経験からお伝えすると、性交障害は、陰茎が下に向かって湾曲してしまう方に多いです。性交障害にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
また、後天性陰茎湾曲症の原因の1つでもあるペロニー病の場合も、手術をおすすめしています。
陰茎のしこりが悪性腫瘍となる可能性はありませんが、自然に治ることはありません。薬物療法から治療を始めることもありますが、改善が見られない場合は手術となります。事前に手術の可能性を考え、検討すると良いでしょう。
一方、先天性陰茎湾曲症の場合、成長とともに湾曲具合が変化する場合があります。そのため、早い時期の手術は行っておりません。追加手術が必要となってしまわないよう、当院での手術可能年齢は高校生以上からです。
もし湾曲方向が1つではなく、2方向・3方向へと曲がってしまうようなら、複数箇所の形成が必要です。事前に手術時間や方法をお伝えしますので、しっかりと準備を整えましょう。
陰茎湾曲症手術について
陰茎湾曲症で手術を行う場合は、術前や術後の準備も大切です。それぞれの時期に行うべき検査や注意点、手術内容を紹介します。
事前準備(術前検査)
手術前の準備として、術前検査を行います。
まず、具体的な手術方針を決めるため、陰毛を短くして、自宅で完全勃起の状態で横からと上からの2枚の写真を持参していただきます。
完全勃起しない場合は、ED治療薬を使用していただきます。さらに性的刺激とご自分の手で与える刺激によって、最大限勃起させてください。
血液検査で感染症検査などを行い、手術の準備を整えます。
手術の流れや方法
手術当日の流れと手術方法について紹介いたします。
① 事前説明
手術当日はまず、術前検査の結果や手術方法についてご説明します。最終的な意思確認でもありますので、疑問点や不安点はここで解消しましょう。
② 手術室に移動
手術室にご案内し、手術開始です。
手術時間は約1時間30分程度ですが、湾曲が複数箇所の場合や屈折の方向などによって、手術時間が2~3時間となる場合もあります。
③ 手術スタート
まず、陰茎基部に麻酔を行います。使用するのは長時間作用型の局所麻酔なので、手術時間が3時間ほどになっても心配はいりません。
手術のための人工勃起は、原則として薬剤を使用しています。陰茎基部を糸で強く締め付ける方法もありますが、それを行ってしまうと神経損傷の恐れがあるため、当院では行いません。薬剤を使用することで自然に近い勃起が実現し、手術前後の評価をより正確に行うことが可能で、陰茎基部の修正も可能になります。
麻酔が効いたことを確認したら、陰茎部分の皮膚を切開します。形成を行う箇所によって傷の数は異なりますが、切開するのは1か所2cmほどです。当院では、周囲の神経や血管を傷つけることのないように顕微鏡を使用して、細かく丁寧に手術を進めます。
ペロニー病や尿道下裂の場合は移植手術を行うこともまれにありますが、陰茎湾曲症の代表的な手術方法はプリケーション法(縫縮法)です。
プリケーション法は陰茎海綿体白膜を縫い合わせる方法で、白膜を削って癒着させます。溶けない糸を最小限使用して結び目を陥没させることで、糸の異物感を感じることなく、真っすぐに補強することが出来ます。再発の心配はほとんどありません。
④ チェック
手術終了前に、患者様に形をチェックしていただき、問題がなければ手術終了です。日帰り手術となりますので、手術終了後は注意事項を確認した後、歩いてお帰り頂くことが出来ます。
手術の流れや方法
手術終了後は以下の注意点を守ってお過ごしください。
- 傷口は1週間テープで保護する
- シャワーは翌日から可能(ただしテープを貼ったままで行う)
- 1週間後からはテープなしでのシャワーも可能
- 入浴は2週間後から可能(傷が完全に乾いてから)
- トイレや入浴以外では陰茎に包帯を巻く(2か月間)
- 飲酒は2週間後から可能
- 喫煙に関するルールは特になし
- マスターベーションは2か月後の診察を終えてから
- 性交は2か月後の診察を終えてから(診察は完全勃起で横からと上からの写真で行い、 メールでも可能です)
手術後は上記のような注意点があります。
あくまでも上記は参考程度なので、術後は主治医の指示に従ってお過ごしください。
陰茎湾曲症手術は銀座リプロ外科(永尾医師執刀)まで
陰茎湾曲症の手術は美容外科クリニックでも行われていますが、本来は泌尿器科の疾患です。泌尿器科医でも経験や知識が浅い医師が行うことで、神経損傷・血流障害・尿道断裂・陰茎の変形などの合併症の危険性があります。必ず経験の多い専門医のもとで治療を行ってください。
当院では、日本性機能学会理事長の経験もある私が、診断や手術を積極的に行っています。日本泌尿器科学会専門医と日本形成外科学会専門医の資格を持っているからこそできる丁寧な技術で、より安全で満足度の高い治療を提供しています。
当院は、男性不妊や生殖機能に関する手術を総合的に実施していますので、陰茎湾曲症以外の治療も可能です。ぜひご相談ください。
陰茎湾曲症は性交障害を伴うため、男性不妊症や男女の関係悪化の原因となり性交に関する焦りや不安が生じます。
デリケートな悩みなので受診をためらう方も多いと思いますが、治療を行うことで患者様の自信回復につながります。少しでもお悩みがある方はぜひ、銀座リプロ外科までご相談ください。